ご挨拶



福山市伏見町市街地再開発準備組合

理事長 藤 本 慎 介

Fujimoto Shinsuke

 

『夢』


 「窓からローマが見える」かつてそういうタイトルの映画があったが、憲司のマンションの部屋の窓からは福山駅が見える。正確に言えば福山駅を見下ろすことができ、その向こうに福山城を見ることができる。すばらしいロケーションを持つ伏見町再開発ビルのマンションに住む憲司だが、特別な人間ではない。地元企業に勤める営業担当の47歳。高校生の男の子を持つごく普通の愛妻家である。仕事において重要なプロジェクトを任されているが、普通の業務にも追われている。だれかの上司であるが、だれかの部下でもある。子供にとっては良きパパでもあるが、妻にとっては時にだらしない面を持つダンナでもある。特に今朝はだらしないダンナである。昨日、久々にやってきた大学時代の友人とこの伏見町再開発ビルの中にある飲食街で飲みすぎてしまい、二日酔いで頭が痛い。家と飲み屋が近いとつい油断をしてしまい飲みすぎてしまう。友人もこのビル内のホテルの一室を予約していたこともあり、二人で昔話に大きな花を咲かせてしまった。シャワーを浴び、体を覚ましながら憲司はふと昨日の友人の言葉を思い出した。「お前がここに住んでいるおかげで会いやすくなったな。福岡から東京への出張帰りにここなら気軽に寄れる。ここのホテルなら翌日の朝一番の新幹線に無理なく乗れるから午前中には家に帰れる。お前が郊外に住んでいたらこうはいかないからな。」憲司は友人の言葉を思い出しながら小さくうなずいた。
 ここに越してくることについてはずいぶん悩んだ時期があった。自分の家族のこと、郊外に家を持つ両親の面倒のこと。両親の実家に戻って二世帯住宅という選択肢もあったが、子供の学校のことなどを考えると踏み切れなかった。そのころ、この伏見町再開発ビルのマンションのことについて知った。憲司の会社がこのビルのオフィスフロアーに入ることが決まったからだった。子供の学校のこと自分の仕事のことなどいくつかの要素を考え、最終的にこの伏見町再開発ビルのマンションに移ることを決心した。同時に両親も家を売り、ひとつフロアー下の部屋に引っ越させた。当時はかなりドライな選択のように言われたが、ビル全体がバリアフリーであること、各種クリニックが併設されていること、そしてデイサービスなどが完備されていることなどを考えると両親にとって郊外よりはるかに快適に暮らせることは間違いなかった。年老いた両親がいつまでも車をベースにした生活を続けることは憲司自身が不安だった。パチンコ好きの憲司の父にとってはビル内にパチンコ場があることも少し心を動かしたようだった。ずいぶん渋ってはいたが最後には憲司の提案にのった。
 シャワーを浴びタオルで体を拭きながら食卓につくと置手紙がある。妻からだ。「隆は図書館で試験勉強中、私は午前中、フィットネスで泳いでます。追伸:おばあちゃんを午後、クリニックに連れていくのを忘れないでね。」なるほど、家の中にだれもいないわけである。少し、憲司は寂しい気持ちになったが、良く考えてみると家族みんなが、5分以内で集まれる場所にいることに気がついた。図書館もフィットネスジムもこのビルの中にあるのだ。午後、母親をクリニックに連れて行くまでには時間がある。憲司は頭をクリアにするためにビル内のショッピングセンターを歩くことにした。挽きたての豆をブレンドしたおいしいコーヒーを出すカフェがある。そのコーヒーが二日酔いの朝には効く。そのコーヒーを飲みながら宝石店、映画館、ドラッグストア、ディスカウントショップ、銭湯、ファミリーレストラン、そして、新鮮な野菜や魚を売っている市場などの前をゆっくり歩いていく。憲司はそこを歩くいろんな世代の人たちを見るのが好きだ。ニュースでは伝わらない生の地域の人たちの生きている鼓動を感じることができる。ちょっとした市場の人たちとの声の掛け合いは懐かしく、仕事に忙殺されている毎日を忘れさせてくれる。土曜日の朝のこの時間を憲司は大切にしている。
 天気が良さそうなので屋上庭園へ行く。ここの一角ではお年寄りたちがベンチに座って編み物をしながら話をしている。また、イベント会社のスタッフたちが音響設備の準備をしている。今日はここでコンサートがあるようだ。また、外を見下ろすと久松通りやシンボルロードのあたりが妙ににぎやかだ。祭りがあるようだ。屋台もお店を出す準備をしている。懐かしい光景が眼下に広がっている。このビルと商店街。新しいものと古くから伝わるものが一緒になっている。この新しいものと古いものが融合するこの空間が憲司はなによりも好きだ。お年寄りの笑い声が聞こえてきた。「今日は祭りに行こう。」憲司は心の中でそうつぶやき、自分のマンションに帰っていった。

 私たちはこんな『夢』を持っています。
17年間を費やし、「伏見町市街地再開発基本計画」の策定に本年たどり着きました。そして、それを推進していくための伏見町をあげての新しい体制も整いました。
『夢』にあるような、人々が憩い楽しめる都市空間の創出を目指して、今後とも精一杯努力して参る所存です。
引き続き皆様方の暖かいご支援を賜りますようお願い申し上げます。

2002年10月27日
         
福山市伏見町市街地再開発準備組合
理事長 藤 本 慎 介

 

過去の挨拶
2002年 9月 『総会にて基本計画案を承認』
2002年 7月 『三つの事業検討委員会を発足』
2002年 1月 『これからのの事業計画について』
2001年12月 『ご挨拶』
2001年 7月 『平成13年度の事業業務内容について』
2001年 4月 『4月・5月の予定について』
2001年 3月 『《福山市の顔》としての拠点作りに向けて・・・』

 

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